【2025年版】赤ブーブー通信社の同人誌即売会を全部集計したよ

いつもお世話になっております。あのアレどこ管理人の仲村です。

気付けば3回目の年間振り返りです。初回は約10年分の振り返りだったので書くことが大量にあり、翌年からはネタが尽きるのではと思っていましたが、なんだかんだと変化のある文化だったようです。

あくまで一個人の見解ですが、少しでも「今この時」の同人文化の一端を知る資料になればいいなと思います。

大変長い記事となっていますので、お時間のある時にお読みください。

過去の記事はこちら。

• 2025年　上半期振り返り
• 2024年　年間振り返り
• 2023年　年間振り返り

宣伝・令和6年能登半島地震の支援のお願い

筆者は震源地となった石川県を生活拠点としており、発生当時はこちらも大きな被害を受けた富山県にて被災しました。震災から約2年経った今では県の中心地こそ賑わいを取り戻しているものの、震源地近くではまだまだ進めなければならない復旧・復興作業が残っているのが現状です。

どうか、皆様には継続的なご支援をお願いいたします。

• 日本赤十字社 令和６年能登半島地震災害義援金（2027年3月31日まで）
• 石川県義援金窓口（2027年3月31日まで）
• 富山県義援金窓口（2027年3月31日まで）

宣伝・運営日記はじめました

ブログサービス「note」にて、あのアレどこの運営日記を始めました。

あのアレどこの運営日記を始めました
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いつものイベント集計のあとには、その時点での分析記事や気になったことなどを書いていこうと考えています。本記事を気に入っている方には興味深い内容になると思いますので、よろしければフォローをお願いいたします。

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赤ブーブー通信社と用語の説明

本記事では同人文化独自の用語も多いので、まず頻出用語を説明します。

すでに十分知ってる方や、動向分析だけ読みたい方は「これまでの動向まとめ」まで読み飛ばして構いません。

赤ブーブー通信社（公式サイト）

印刷会社・曳航社のイベント部門「赤ブーブー通信社」として1986年に単独主催した「Wingマーケット」から始まり、1988年にはイベント部門が独立してイベント専業会社「ケイ・コーポレーション」を設立。現在はオールジャンルイベント「コミックシティ」などを東京・大阪・福岡を中心に開催。

参考・同人誌の母・田中（赤桐）圭子さんインタビュー【電子版】（サークル・みるく☆きゃらめる発行）　

青ブーブー通信社（公式サイト）

「ケイ・コーポレーション」の別ブランド。現在は主に大阪で「こみっくトレジャー」を定期開催しています。

本サイトでは青ブーブー通信社主催イベントも集計していますが、赤ブー主催とは傾向や方針が異なるため本記事で取り扱いません。

イベント形態の分け方

本記事では赤ブー主催のイベント形態を、下記に分けて考えます。

※以下は本記事の執筆にあたって便宜上設定した区分であり、赤ブーブー通信社または一般的な名称・区分とは異なる場合があります。

オールジャンルイベント

ジャンルを問わずサークル参加できる同人誌即売会の形式です。

赤ブー主催では「コミックシティ」、青ブー主催では「こみっくトレジャー」という名称がついています。

他主催では、コミックマーケットもこちらに分類されます。

オンリーイベント

同人文化では、特定傾向のサークルのみ参加できる同人誌即売会を「オンリーイベント」と称しています。

赤ブー主催では、オールジャンルイベント内にてオンリーイベントを併催していることがあります。また、オンリーイベントのみを複数開催する集合イベントもあり、こちらは「TOKYO FES」「OSAKA FES」などと開催地の名称がついています。

他主催では、コミティア（オリジナル作品）、博麗神社例大祭（東方Project作品）もこちらに分類されます。

投票型オンリーイベント

参加者からの投票により開催決定されたオンリーイベントです。

現在は主に「カップリングオンリー」と「作品オンリー」の2系統に分かれて開催されています。本年の開催実績は以下です。

カップリングオンリー

• VALENTINE ROSE FES 2025
• 星に願いを 2025 -day1-
• 星に願いを 2025 -day2-

作品オンリー（オールジャンル内併催）

• HARU COMIC CITY 34
• SUPER COMIC CITY 32
• GOOD COMIC CITY 31 大阪
• COMIC CITY VEGA 2025
• COMIC CITY SPARK 20

以上の大枠を踏まえて、サブカテゴリとして下記の形態があります。

有志主催プチオンリー

大型同人誌即売会の内で開催されるイベント内イベントを、赤ブーでは「プチオンリー」と呼びます。主催はサークル参加者です。

内容は「作品」「キャラクター」「カップリング」「フェチ」「シチュエーション」など、さまざまな企画主旨で開催されています。

赤ブー主催プチオンリー

元々プチオンリーとは前述のような有志主催イベントを指していましたが、現在は赤ブー主催のものも開催されています。

内容は「作品」と「キャラクター・カップリング」に大別されます。

以上を整理すると、仮に「〇月〇日開催の赤ブーイベント」に現地参加すると、下図いずれかの形態でイベント開催されているイメージです。

本記事では解説のため以上の区分を行いましたが、実際にこれらは越境したり見直されるなどして常に変動しています。必ずしもこれに当てはまらないケースが多々あることはご了承ください。

これまでの動向まとめ

今年のデータの前に、前年までの動向を整理しておきましょう。ポイントは以下の2点です。

• オンリーイベントへのサークル参加の偏重
• 投票型オンリーイベントの台頭

まず現在の赤ブーブー通信社イベントとは、ずばりイベント形態「オンリーイベント」に参加サークルが集中する傾向にあります。

一例として、ここではまずあえてオールジャンルイベントにて、特定ジャンルに参加するサークルの数をグラフにしました（開催地は東京で統一しています）

いずれも数百サークル以上が集う超人気ジャンルですが、同じ地域かつオールジャンルという条件内でも、イベントによっては最小で十数サークルにまで参加数が減ります。

なぜここまで極端な差が出るかというと、参加サークル数が多い回とは、オールジャンルイベント内で該当ジャンルのオンリーイベントが開催されており、サークルが集中して参加しているからです。

逆に、仮に全体1万～2万サークルを集める超巨大オールジャンルイベントであっても、オンリーが開催されていないジャンルにはサークルがほとんど参加していない、という状況がしばしば発生しています。

これらの裏付けとして、今年のオールジャンルイベントのうち「オンリー開催がある・なし」でジャンル数とサークル数の割合を見てみましょう。

オンリー開催しているジャンルは全体の約4割ですが、このオンリーに参加しているサークル数は全体の9割に及んでいます。名目上はオールジャンルイベントであっても、参加実態としてはオンリーイベントとして参加している動向が見て取れます。

以上を踏まえて、近年注目されているのは「投票型オンリーイベント」です。

サークル参加に大きな影響を与えうるオンリーイベントですが、一方で実施有無や開催日程は主催がコントロールしています。そのためサークルからすると、希望するジャンルのオンリーイベントがなかなか開催されずに参加機会を持てずにいる、ということがしばしば起きえます。

そんな状況もあって、参加者の投票行動によってオンリーイベント開催を確約できる「投票型オンリーイベント」への注目が年々高まっています。

仕組みとしては、赤ブーブー通信社と提携している印刷所にて同人誌を新規発注すると「Akaboo専用投票引換券（いわゆる「新刊カード」）」が送付されます。そのカードを指定のイベントに持ち込むと「投票権」と交換でき、それに開催を希望するジャンルやカップリング名を記載し投票します。そこで一定数の投票が集まったジャンルは赤ブー主催で開催確約される、というもの。

もともと新刊カードは、2020年の東京オリンピック開催による同人誌即売会の規模縮小を見込んだ対抗策として、国内の主要イベント・同人委託書店が集った「DOUJIN JAPAN 2020」プロジェクト内の一環でした。DJ2020本体が終了した現在は、赤ブーブー通信社が中心となって独自カードを発行しています。

企画の発端から瞬く間に参加者に認知され、特に、単独開催されるカップリングオンリーイベントとは、一時は最大2万サークルを集める国内トップクラスのイベントにまで拡大するなど、非常に注目度の高いイベントとなっています。

少し横道にそれますが、これらのオンリーイベントの定着ぶりを前提としないと、現在の赤ブーイベントにおいていわゆる「ジャンル人気」を図る上で大きなネックになります。

とあるジャンルのサークル人気を図ろうとしても、あるイベントでは10サークルでも、別日程のイベントでは1000サークル以上集っている、ということは現実にありえるからです。

もし本サイトのイベント集計を参考に、特定ジャンルの人気度合いを知りたいのであれば、以上の動向を踏まえてデータを見る必要があることは、重々ご承知いただきたいと思います。

長くなりましたが、以上が前年までのポイントです。これらを踏まえて今年の動向をみていきましょう。

2025年のイベント基本情報

まずは2025年の全体のデータをみてみましょう。

なお、本記事で扱うデータやグラフは、本サイトで集計したNAVIO（赤ブーブー通信社のウェブパンフレット）のサークルデータをもとに独自で算出しています。なお、特別な注釈がない限り、開催中止になったイベント分は数値に含んでいません。

2025年の赤ブー主催はイベント開催日数18日、総参加サークルは138,787サークルでした。同じイベント名でも別日程のものはグラフも分かれています。

次は開催地別のデータです。

以上踏まえて、本サイトにて取得した2014年から2025年の年間総サークル数をグラフ化しました。

2025年のサークル動向分析

ここからは筆者の所感も交えて、気になった分野を掘り下げていきます。

地域別分析

まず今年の全体傾向ですが、前年から総サークル数は微増～ほぼ変化なしという状況でした。伸び率では前年以上に鈍化しています。

掘り下げのため、ここでは地域別のデータを見てみましょう。主な開催地域である東京・大阪・福岡ごとに年間のサークル数とイベント日数をグラフにしてみました。

東京イベント

大阪イベント

福岡イベント

東京・大阪は昨年に引き続き微増、もしくは横ばい状態です。どちらの地域も伸び率がかなり鈍化しています。

では、今年に入ってサークル参加の勢いが落ちたのか、というと必ずしもそうではないのではないかと思います。

前提として、赤ブーブー通信社のイベントにおいて当初の想定を超えたサークル応募があった場合、「満了」という形で参加申し込みが締め切られます。

ほか主催のコミックマーケットやコミティアなどでは、いったん期日まで参加募集を募ったうえで抽選が行われますが、赤ブーの場合はそもそも「ある時点で申し込み自体できなくする」という形で規模をコントロールしています。

そこへいくと、本年は東京の主要イベントではいずれも満了による申し込み締め切りがあり、サークル応募自体は盛況だったようです。

5月スパコミのサークル数推移

スパークのサークル数推移

一定段階で申し込み自体が締め切られるため、応募総数は推し量ることしかできませんが、満了時期の速さなどを考えるとサークル側の参加意欲自体は昨年と変わらないように感じます。

また今年は東京ビッグサイト東館の大規模改修工事が本格化し、イベント自体の規模が大きくとれないという背景もありました。こちらの工事は2026年末（施設全体では2028年）まで続くことからも、おそらく来年も早期満了が発生する可能性が高いと思われます。

次に大阪イベントです。

今年は年始1月は前年を大きく超えるサークル参加がありましたが、8月のイベントは前年比から減少するという極端な結果になりました。

この8月は、今年の夏季コミックマーケットと日程が重複しており、普段であれば「夏コミに参加して、そのあとに夏インテ（大阪の赤ブーイベントの俗称）にも参加する」というサークルでも、「どちらかにだけ参加する」と選択を迫られていたのかもしれません。

こちらは昨年公開されたコミケ・赤ブー合同の注意喚起です。

2025年夏の同人誌即売会開催日程において、赤ブーブー通信社主催の『GOOD COMIC CITY 31 大阪』と、コミックマーケット準備会主催の『コミックマーケット106』は、一部開催日程が重複することとなりました
https://www.comiket.co.jp/info-a/C106/C106Schedule.html

また、今夏は大阪万博の会期とも重なっており、現地の交通や宿泊などにかなりの混雑がみられたことも参加控えに繋がった要因と考えられます。

来年は万博も終了しており、いまのところ夏コミとの日程についても発表がありません（昨年は10月に発表がありました）　おそらくはいつも通りのずらした日程となると予想されます。

以上を総括すると、本年は東京ビッグサイトの改修工事や大阪万博の影響もあり、規模を拡大しきれなかったように感じています。

ほか主催ではコミックマーケットやコミティアも、工事の影響で配置サークル数や導線が少なくなった旨が報告されています。改修工事は来年いっぱいまで続くことから、来年も参加者には厳しい1年となりそうです。

• コミックマーケット１０６アフターレポート
• COMITIA154 レポート

ただし大阪イベントについては、万博の終了に伴い来年は通常ベースでの開催となりそうです。2026年には初の大阪開催の投票型オンリーイベントが予定されており、これまでと違う試みも実施されます。こちらがどれだけ賑わうのか、注目していきたいと思います。

最後に、福岡では昨年の開催実績は1日でしたが今年は2日となり、サークル規模も増やしています。1イベント2000サークル前後と東京・大阪以外のイベントではかなり大きく、参加者のレポートを見ても賑わっているようです。

ただし2026年の開催予定は1日しか予告されていません。追加開催がなければ、おそらく通年ではサークル参加の減少が見込まれます。

投票型作品イベントの増加

近年は単独開催される投票型CPオンリーが何かと注目されがちですが、並行して実施されている「投票型作品オンリー」に注目してみましょう。

投票型作品オンリーは「開催決定までの投票数がCP別より少ない」「大型オールジャンルイベント内で開催される」という特徴があります。開催ハードルが総じて低く、なかなかサークルが集まる機会を持てない中小ジャンルでも開催のチャンスがあります。

こちらは投票型イベント全体の認知向上もあってか、作品オンリーの数も年々増加しています。

5月スーパーコミックシティ内　投票型作品イベント推移

2024年の振り返り記事では、「開催時期の近いオールジャンルと投票型CPオンリーで、内部ではサークルが分散しているのでは」と書きましたが、そのオールジャンルイベント内では作品単位の投票イベントが盛況になりつつあるようです。

旬ジャンルと投票型イベントの時間差

今年のデータの特徴として感じたのは、「今年の最多サークルジャンルが集ったイベントは、投票型CPオンリーイベント以外だった」という点です（具体的な数は「2025年はどんなジャンルにサークルが集まったかtop100」参照）

昨年は、最多サークルジャンル上位は過去最大級の開催規模となった投票型CPイベント「JUNE BRIDE FES」内に集中していました。しかし今年はそうではありませんでした。では投票型CPイベントへの人気が衰えたのかというと、そうではないように思います。

まず昨年と前年の年間総サークル数はほぼ横ばいです。年内の投票型CPオンリーも、日程こそ分かれていましたが合計値では昨年と今年で大きな差はありません。

ではなぜ今年のトップジャンルの土壌とならなかったのか、これは「投票日と流行の時差」が関係しています。

すでに説明した通り、投票型イベントとはイベント開催の約1年前に参加ジャンルが決まります。つまり、投票から開催の間に新たにジャンル人気が勃興した場合、参加サークル数にはほとんど反映されません。

2025年の投票型CPイベントと投票日程

例外的に長く続いていたジャンルが急拡大した場合などは、たまたま先に投票型イベントの開催が決定しており、そこに新興サークルが急遽参加するという現象はあります。

ただ投票型の場合、開催が決まっていたCPと、旬になったタイミングで人気になったCPが別だったりするなど、ミスマッチが発生する可能性があるため必ずしも時勢を反映していません。

その一方で赤ブー主催のオンリーイベントの場合、旬ジャンルの盛り上がりを察知した主催がオンリー開催を決定し、そこにこぞってサークル参加者が集うという現象が起きます。筆者の観測範囲では、ジャンルが勃興してから2～6か月ほどで最初のオンリーイベントが開催されるケースが多いようです。

投票型は約1年のラグがある中で、今年はこの主催によるオンリー施策効果が大きく、結果として今年トップのジャンルが投票型以外のイベントで発生した、と考えています。

投票型とは、構造上このような時差がつきものであるため、必ずしもその時一番の旬ジャンルの土壌になるわけではありません。むしろ「人気が興ってから数年以上経過したジャンルの土壌である」という側面が非常に強いと感じています。今年勃興したジャンルも、来年以降はおそらく徐々に投票型の単独イベントに軸足が移っていくものと予想されます。

現在の赤ブーイベントとは、赤ブーイベント内でもサークルの回遊が発生している、非常に複雑な状況であるといえるでしょう。

2025年はどんなジャンルにサークルが集まったかtop100

最後に「2025年はどんなジャンルにサークルが集まったかtop100」を掲載します。

毎回記載していることですが、現在の赤ブーイベントのサークル動員とは、強力な影響力を持つオンリーイベントや投票型イベントの存在を抜きには語れません。単純な数の比較が、サークル参加者たちの熱意と比例しているとも限りません。

一方で、参加者の視点に立つと「一番熱があるときに、参加できるイベントがあるなら参加したい！」という気持ちがあるのも事実で、そこには今この瞬間の情熱や流行があるのでしょう。そのため、本項ではジャンル以外に「開催イベント」も分類項目として含めています。

以上を踏まえて、本文に記載した内容も前提に、今年の記録として眺めてもらえれば幸いです。

※ランキングデータの本サイト外への転載・コピー行為を禁じます。

終わりに

今年の記事も以上で終わりです。

この記事を書き始めてからというものの、同人文化の、それも赤ブーブーイベントを中心にまとまった記事を書いているのが珍しいのか、ありがたいことに多くの人に注目いただいているようです。

個人的には振り返り記事についても、そもそものサークル集計にしても、専売特許にしているつもりは全くなく、誰でも自由闊達に語り、時に批評できる文化である方が嬉しいなと思っています。良ければ皆様も今年の振り返りの種に、弊サイトをご利用ください。

来年からnoteを運用していこうと思ったのも、このまとめ記事でやっているような振り返りをもっと短く頻繁に展開できないかなと考えたからでした。現在、本記事のあとがきも公開中です。記事本文から横道にそれすぎた話題を拾っています。よければこちらもお読みいただけると幸いです。

赤ブー全部調べた2025年版あとがき
https://note.com/anodoko/n/nbac067220c58

それではみなさま良いお年を。

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