【2024年版】赤ブーブー通信社の同人誌即売会の年間データを集計したよ

いつもお世話になっております。あのアレどこ管理人の仲村です。

昨年の振り返り記事がご好評いただき、今年もまた書きました。来年以降も継続するかどうかはまだ考えていないのですが、少しでも「今この時」の同人文化の一端を知る資料になればいいなと思います。

大変長い記事となっていますので、お時間のある時にお読みください。

過去の記事はこちら。

• 2023年年間振り返り
• 2024年上半期振り返り

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本記事で掲載しているデータや文章・画像は、一部除いて良識の範囲内でご利用いただいて構いません。その際には「あのアレどこ」出典であることを明記（URL、サイト名など）してください。

ただし「2024年はどんなジャンルにサークルが集まったかtop100」の転載・コピーは禁じます。

赤ブーブー通信社の説明

まず、用語説明です。記事内では同人文化独自の用語や、赤ブーブー通信社に馴染みのない人にはわかりづらい用語も多いので、前提情報として記載します。

前年からほとんど変化はないため、すでに十分知ってる方、前年の記事で読んだ方は「2024年のイベント基本情報と動向分析」まで読み飛ばして構いません。
　
　
　

赤ブーブー通信社（公式サイト）

印刷会社・曳航社のイベント部門「赤ブーブー通信社」として1986年に単独主催した「Wingマーケット」から始まり、1988年にはイベント部門が独立してイベント専業会社「ケイ・コーポレーション」を設立。現在はオールジャンルイベント「コミックシティ」などを東京・大阪・福岡を中心に開催。

参考・同人誌の母・田中（赤桐）圭子さんインタビュー【電子版】（サークル・みるく☆きゃらめる発行）

同社は現在ハンドメイド作品頒布イベント「arteVarie」も主催しています。こちらはアクセサリー・コスチューム・手芸品といった、同人誌・冊子以外のグッズ頒布がメインになったサークルが参加しているイベントです（本サイトでは基本的に集計を行っていません）
　
　
　

青ブーブー通信社（公式サイト）

「ケイ・コーポレーション」の別ブランド。現在は主に大阪で「こみっくトレジャー」を定期開催しています。

本サイトでは青ブーブー通信社主催イベントも集計していますが、赤ブー主催とは傾向や方針が異なるため本記事で取り扱いません。
　
　
　　

イベント形態の分け方

本記事では赤ブー主催のイベント形態を、下記に分けて考えます。

※以下は本記事の執筆にあたって便宜上設定した区分であり、赤ブーブー通信社または一般的な名称・区分とは異なる場合があります。
　
　
　
オールジャンルイベント

ジャンルを問わずサークル参加できる同人誌即売会。

赤ブー主催では「コミックシティ」、青ブー主催では「こみっくトレジャー」という名称がついています。他主催では、コミックマーケットもこれに分類されます。
　
　
　
オンリー集合イベント

同人文化では、特定傾向のサークルのみ参加できる同人誌即売会を「オンリーイベント」と称しますが、それを同時に複数開催している形式。

赤ブー主催では「〇〇（開催地） FES」といった名称がついています。
　
　
　
投票型オンリーイベント

参加者からの新刊カード投票により開催決定されたオンリーイベントを集めた同人誌即売会。

2024年は主に「カップリングオンリー」と「作品オンリー」の2系統に分かれて開催されました。本年の投票型オンリーイベントの開催実績は以下です。
　
カップリングオンリー

• JUNE BRIDE FES.2024
• DOZEN ROSE FES 2024

　
作品オンリー（オールジャンル内併催）

• HARU COMIC CITY 32
• SUPER COMIC CITY 31
• COMIC CITY VEGA 2024

　
　
　
以上の大枠を踏まえて、サブカテゴリとして下記のイベント形態があります。
　
　
　
有志主催プチオンリー

大型同人誌即売会の中で開催されるイベント内イベントを、赤ブーでは「プチオンリー」と呼びます。主催はサークル参加者です。

内容は「作品」「キャラクター」「カップリング」「フェチ」「シチュエーション」など、さまざまな企画主旨で開催されています。
　
　
赤ブー主催プチオンリー

元々「プチオンリー」は前述のような有志主催イベントを指していましたが、近年は赤ブー主催のプチオンリーも開催されています。

内容は「作品」と「キャラクター・カップリング」に大別されます。
　
　
　　
ざっくり整理すると、仮に「〇月〇日開催の赤ブーイベント」に現地参加すると、下図のどちらかの形態でイベント開催されているイメージです。

　
本記事では解説のため以上の区分を行いましたが、実際にこれらは越境したり見直されるなどして常に変動しています。必ずしもこれに当てはまらないケースが多々あることはご了承ください。
　
　
　

2024年のイベント基本情報と動向分析

まずは基本情報をデータでみてみましょう。

なお、本記事で扱うデータやグラフは、注釈がない限り本サイトで集計したNAVIO（赤ブーブー通信社のウェブパンフレット）のサークルデータをもとに算出しています。

2024年の赤ブー主催はイベント開催日数18日（17イベント）、総参加サークルは133,794サークルでした。

　
　
　
次は開催地の比率です。2024年の開催実績は下記のとおりです。

　
　
　
以上踏まえて、本サイトにて取得した2014年から2024年の年間総サークル数をグラフ化しました。

※中止・振替になったイベント分は含んでいません。

所感・地域別調査

ここからは筆者の所感です。

前年から総サークル数は増加しましたが、今年もコロナ渦・オリンピック会場問題以前の2018年の数値にはわずかに届かない状況でした。

これらの分析のために、さらに主な開催地域である東京・大阪・福岡ごとに年間のサークル数とイベント日数をグラフにしてみました。
　
　
　
東京イベント

大阪イベント

福岡イベント

　
　
　
グラフの通り、東京開催は2018年とほぼ同規模までサークル数が戻っていますが、大阪・福岡開催は規模が戻ってきておらずイベント数も往時より減っています。

福岡では2019年以前は年3回、2020年以降も年2回を定期開催としていましたが、今年は年1回まで減少しました。参加数を見ると1回分のサークル数は多くなっているようですが、開催数が減っていることもあり2019年の半分以下になっています。

一方大阪は、開催日数こそ2020年以降は徐々に増加していますが、今年のサークル数は前年比で減少しています。

主な大阪イベントを振り返ってみます。まず今年開催のあった1月・3月・5月・8月の大阪イベントと、過去からの推移です。

1月

3月

5月

8月

　
　
　
個人的に気になったのは1月と8月開催です。

この2イベントは10年以上定期開催され、時期の近いコミックマーケットと並んでサークルにも認知されている大イベントです（いわゆる冬インテ・夏インテ）　しかし、両イベントとも普段であれば1万サークル前後が集まるところ、今年は約7000サークルと規模が振るいませんでした。

また、8月イベントは昨年はほぼ回復したといえる規模になっていましたが、今年は大幅に減らしています。というのも実は、今年の「8月イベント」は開催されていません。

今年はインテックス大阪の長期改修工事と重なり、いつもの8月中旬から9月1日開催に大幅な日程変更されました。イレギュラーな日程により、普段より参加を控えたサークルが多かったのではと考えています。

（集計の便宜上、この9月1日イベントを8月イベントとしてカウントしています）

また補足として、この9月1日当日に台風10号接近の影響もあり、サークルに対する補填をかねて急遽10月の神戸にてコミックシティが開催されました。

／
無事閉会しました！
GOOD COIC CITY 30 神戸
＼
台風10号の影響により9/1大阪開催にご参加頂けなかった関西圏のサークル様向けに「なんとか頒布の場を」と準備した開催でした。… pic.twitter.com/THfTsJUN9q

— 赤ブーブー通信社 (@AKABOO_OFFICIAL) October 14, 2024

以上整理すると、東京はほぼ以前と同じサークル数に戻りましたが、大阪・福岡ではそれぞれにまだまだ厳しい年だった、といえるのかもしれません。

なお、この記事を書いている時点で、次回の1月大阪イベントはサークル拡大の報告がされています。また福岡イベントは再び年2回のスケジュールが公開されています。来年こそは大阪・福岡でも「復活の1年」となるのか、注目していきたいと思います。
　
　
　

所感・2025年の会場問題

先日コミックマーケット・赤ブーブー通信社の両名から発表があった通り、2025年夏の2大イベントが同日開催となります。

そもそも夏コミと夏インテ（インテックス大阪での赤ブーイベント通称）は、普段は約1～2週間離れて開催されることが常でしたが、大阪万博の影響もあり従来の日程で開催できなかったとのことです。

2025年夏の同人誌即売会開催日程において、赤ブーブー通信社主催の『GOOD COMIC CITY 31 大阪』と、コミックマーケット準備会主催の『コミックマーケット106』は、一部開催日程が重複することとなりました

2025年夏の同人誌即売会開催日程について

これにより、参加者（一般・サークル）の偏りが発生したり、印刷所によってはどちらかのイベントへの直接搬入が難しくなったり、入稿スケジュールが早まるのではないかと思われます。

また以前から本シリーズでも触れていますが、2025年からは東京ビッグサイトの長期改修工事が本格化します。東京ビッグサイトを利用する同人誌即売会においても、大きな制限がかかることが予想されます。

※大規模改修工事により、以下のとおり施設の部分休館が発生いたします。

休館期間（予定）
　西展示棟：2025年1月から2025年6月末まで
　東展示棟（1～3ホール）：2025年7月から2026年3月末まで
　東展示棟（4～6ホール）：2026年4月から2026年12月末まで
　全館：2027年1月から2027年2月中旬まで
　　　　2028年1月から2028年2月中旬まで

引用元：利用照会（空き状況のお問合せ）｜ご利用ガイド｜東京ビッグサイト（東京国際展示場）

来年以降もあちこちでイレギュラーな状況が続くことから、参加者におかれましては各イベントからのアナウンスにはご注意ください。
　
　
　

2024年のサークル参加動向

ここでは、今年個人的に気になった動向を掘り下げていきます。

まず前提として、2023年のまとめ記事でも説明しましたが、現在の赤ブーブー通信社イベントとはオンリーイベントにサークルが極端に集中する傾向にあります。

このオンリーイベントの開催は、基本的に赤ブーブー通信社に決定権があり、参加サークルの規模や年齢層、人気度などを加味して開催イベントを決定しているとのことです。

イベントの開催間隔をどれくらい開けたら最大効率の集客ができるのか、イベント参加者の年齢層はどのくらいなのか。そういったデータも取って、検証を続けていきました。実は5年くらい前から始めており、今ようやくある程度つかめてきたところです。

「ノウハウは開催しないと蓄積できない」　ウィズコロナの同人誌即売会、模索した赤ブーブー通信社に聞く（2021.05.23）

オンリーイベントは1日に100以上開催するケースもあり、決してトップクラスの一握りだけ対象としているものではありません。

とはいえ一参加者として考えると、自分が参加希望するジャンルのオンリーイベントがいつどこで開催されるのかは主催任せだし、オンリーを無視してイベント参加するのも実りが少なく、自らイベントを立てるのは時間や費用の問題からも難易度が高い……というジレンマがあるのもまた事実です。

そういった前提もあってか、近年急速に注目されたのが、参加者が企業にイベント開催してもらえる投票型オンリーイベントです（成立経緯やシステムなどは2023年の記事参照）

今年、赤ブーイベントの中でも過去最大級のサークルが集まり、大きな話題になった6月の「JUNE BRIDE FES 2024」の盛り上がりは、まさに投票型オンリーイベントの注目度の高さを示しているのでしょう。

ただし、JBFがあまりにも大きな注目を集めたイベントだったためか、直近5月開催のSUPER COMIC CITY東京はサークル数を減らすといった影響もあるようでした（このあたりの詳細は2024年上半期まとめ記事に記載しています）

それらを踏まえて下半期の投票型オンリーイベント「DOZEN ROSE FES 2024」と周辺イベントの動向を見ていきます。
　
　
　
DOZEN ROSE FESのサークル数推移

グラフの通り、DOZEN ROSE FES 2024は前年から大きくサークル数を減らしています。

というのも、投票開始時には1イベントでの開催予定でしたが、前年の賑わいや投票数を鑑みてか途中から2イベントに分割開催することになりました。残りのジャンルは2025年2月開催「VALENTINE ROSE FES 2025」に振り分けられています。
　　
次に、下半期の主要な定期イベントの推移をグラフにしました。

※「GOOD COMIC CITY」の名称で馴染んでいた8～9月の東京イベント群は、今年から「COMIC CITY VEGA」に名称を変更しました。代わりに、8月開催の大阪イベントが「GOOD COMIC CITY大阪」の名称になるとのことです。

下半期の主要イベントは前年よりも規模を拡大し、かなり好調な様子でした。特にスパークは1万5千サークルを超える賑わいで、コロナ渦以前の規模にほぼ回復しています。

また、12月15日開催「COMIC CITY 東京 151」には7000サークル超が集まり、DRFと冬コミに挟まれた時期での開催でしたが、サークル数としてはまずまずの規模です。

以上踏まえると、下半期は上半期ほど投票型オンリーイベントが周辺に与える影響は少なかったように思います。
　
　
　

所感・投票型オンリーイベントの特徴と今後

先ほど引用したインタビューのとおり、赤ブーブー通信社は2010年代中ごろからサークル動向を分析し、いつどこでどのジャンルのオンリーを開催するかの目安としてきました。これらはスタジオYOUなど他の企業主催イベントでも見られる傾向です。

こういった企業主催のオンリーイベントが年々一般化していく一方で、投票型オンリーイベントという主催による調整が及ばないことが魅力のイベント形態が人気になるのも、参加者心理の側面を反映しているようで興味深い現象です。

しかし、そんな投票型オンリーイベントも今年からは一部で分割開催が行われるようになりました。この分割の実態とは、参加者投票によるジャンル決定後に、イベント主催によるジャンル配置日が振り分ける調整行為です。

この投票型オンリーイベントの分割開催は、来年度以降も引き継がれていくようです。

• 星に願いを 2025 -day1-（2025年6月15日）
• 星に願いを 2025 -day2-（2025年7月13日）
• VALENTINE ROSE FES 2026 -day1-（2026年2月1日）
• VALENTINE ROSE FES 2026 -day2-（2026年2月8日）

やはり、ある一定以上の規模になると主催によるコントロールは免れないのだなと感じています。

またサークル動向を見るときの留意点として、よく取り上げられる「JUNE BRIDE FES 2024」「DOZEN ROSE FES 2024」などは、カップリング単位のオンリーイベント群であることを注意しておく必要があります。

例えば「作品A」があるとして、JBFやDRFでは「作品Aにおける、キャラクターBとCの組み合わせを取り扱うサークル」での参加となり、作品A全体は取り扱いません。そのため、同じ作品Aで活動するサークル内でも、JBF・DRFに参加できないサークルも無数に存在しています。

※新刊カード制では作品オンリーへの投票も存在していますが、こちらは大規模オールジャンルイベント内で開催されており、現状で単独イベントはありません。

予想ですが、今後はカップリング単位で投票開催できるようなサークルは投票型オンリーイベントに、それ以外は他イベントに集まることとなり、結果、同じジャンルであっても同じイベントに参加していないという状況が、今まで以上に極端になるのかもしれません。

これまでにもカップリング単位のプチオンリーの日程が分散するケースがしばしばありましたが、そこへ更に投票型イベントの影響で人が分散するケースも増えていくことは十分に考えられます。

そうなった場合、果たして参加者が希望するような賑わいが維持されるのか、こういった状況が長期的に維持されるのかと、昨年に引き続いて懸念が残ります。

また、集計していて感じる投票型オンリーイベントの特徴として「ジャンルの変動がゆるやか」があります。

イベント開催の約1年前にジャンル投票が締め切られるため、例えばある人気ジャンルがイベント開催直前に発生しても、サークル数には全く反映されません。そのため投票型イベントのジャンル傾向としては、数年前から一定以上の規模を持った中堅～大型ジャンルが中心になります。

2025年以降の投票型オンリーイベントの投票日と開催日

企業主催だとこのあたり反応速度が速く、作品人気が目に見えて発生してから2～3か月後にはオンリー開催しているといったことは珍しくありません。こういった時差も、今後のイベント動向に影響を与えるかもしれません。

あれこれ書いてきましたが、個人的には投票型という形式が人気な現状をみていると、やはり同人活動とは参加者の主体的行動によって形作られる文化なのだな。と実感もしています。

様々なイベント形態が生じている背景には、同人文化全体の成熟や拡大もあるように思います。今の状況がどれくらい続くのかはわかりませんが、叶うならこの豊かな状態がより広く長く続くような形に落ち着けばいいなと、一参加者としても願っています。
　
　
　

所感2・赤ブーブー通信社、過去の開催記録を公開

今年、赤ブーブー通信社が珍しい発信をしていたので紹介します。

6/30（日）JBF2024開催まもなく！
参加サークル様
印刷会社各社は万全の受け入れ体制で皆様の新刊入稿をお待ちしています。

記録上最大規模をお知らせしたJBF2024の東西棟開催について、突然大規模化したような反響を頂いております。… pic.twitter.com/eSO4LARkQU

— 赤ブーブー通信社 (@AKABOO_OFFICIAL) June 9, 2024

「記録上最大規模をお知らせしたJBF2024の東西棟開催について、突然大規模化したような反響を頂いております。」とあるように、JBFの開催近辺では「これまでにない規模のイベントだ」といった期待と不安の声がSNSであがっているのを見受けられました。上記はそれらの反響を受けて発信されたものです。

個人的にこの投稿で注目したのは、過去イベントの参加サークル数と来場者数が記載されている点です。

現在、赤ブーの来場者数は基本的に公表しておらず、たまにSNSで報告したり、サークル参加者への御礼メールに記載されている程度で、あまり公的な資料はありません。

またそもそも開催が終わったイベントは公式サイトやイベント一覧から削除されて、過去にどんなイベントがあったか、どんな規模でどんな様子だったのか、公的に振り返る手段がありません（過去には公式レポートページがありましたが現在は削除済み）

そんな背景もあってか、元話題の中で「1日あたりコミックマーケットの規模を、赤ブーが初めて超える」といった表現をしたり、時にはコミックマーケットの悲観論や衰退論に繋げる様子が、同人活動をしている人の中でも見受けられました。

まず筆者が把握している限りでも、ビッグサイト増床前の標準的コミケ規模であった「1日1万2千サークル」を基準とすると、それを超える赤ブーイベントはこの10年でも定期的に存在しており、そもそも珍しくありません。
　
以下は弊サイトで集計した中で、1万2千サークルを超えた主なイベントです。

　
　
コミックマーケットはその申込数の多さから当落がある同人誌即売会ですが、赤ブーイベントは先着順のため当落こそありませんが、代わりに申し込み予定が早々に切り上げられてしまう満了があります。近年は早々に申し込み満了となることは珍しくありません。

改めて赤ブーブー通信社について説明すると、よく「国内第2位の同人誌即売会」と呼称されることも多いと思います。その実態は、ほとんど毎月イベントを開催し続け、1万サークル以上が集まる大イベントを年数回開催し、東京以外の地域でも数千サークル規模のイベントを定期開催する影響力をもったイベンターです。

結果、赤ブーブー通信社は10年以上前から年間累計10万サークル超を動員しており、コミックマーケットとはまた異なる形の国内トップクラスの大規模イベンターといっても差し支えないでしょう。

その傍らで同時期のコミックマーケットの賑わいが落ち込んでいたイメージはないはずです。むしろコロナ渦以前のコミックマーケットは、特に一般参加者を中心に年々拡大する賑わいを見せていました。

例えば2019年8月のC96は、東京オリンピックの影響で会場利用に大きな制限があり、有料入場制が初めて導入されて、さらに4日間という長期開催でしたが、蓋を開けてみれば1日あたりの来場者数が落ち込むことなく過去最高の来場者数を記録しています。

入場者数
・ 　９日（金）　 １６万人
・ １０日（土）　 １７万人
・ １１日（日）　 ２０万人
・ １２日（月）　 ２０万人

参照元・コミックマーケット９６アフターレポート

改めてコミケと赤ブーのデータを比較すると、1日あたりのサークル数こそ意外と大きな差はないのですが、来場者数では赤ブーは最大で1日8万人ほどの中、コミックマーケットは1日15万人を超えており圧倒的な差があります。

執筆時点で数時間前に閉会となったC105では、サークル数こそ3万サークル弱とコロナ渦以前の規模には届いていませんが、来場者数では1日15万人を記録しており以前の規模までほぼ回復しています。

コミックマーケットとは「国内トップの同人誌即売会」と表現されますが、累計サークル数はもちろんのこと、なによりもこの他同人イベントでは類を見ない、圧倒的な来場者数があってこその存在感だと筆者はとらえています。

コミックマーケット105の2日目が閉会しました！
本日の来場者数は15万人でした。
今回もご来場ありがとうございました！
これにて105番目の会期が終了です。
お疲れ様でした！
明日31日開催はございませんのでお間違いなく！！#C105 pic.twitter.com/OuzLRocgEe

— コミックマーケット準備会 (@comiketofficial) December 30, 2024

筆者の観測範囲では、今年前半に「赤ブーイベントが突然大規模化した」と思い込んだ方から、他イベントへの悲観論に繋げる話題を本当によく見かけました。

しかし赤ブーブー通信社やその参加者からすれば、今年のJBFとは大きくはあれど、ここ10年間で近い規模は何度もあったレベルのイベントです。こういった悲観論とは、そもそも赤ブーイベントの実態をよく把握しないままに他イベントを貶める安易な根拠としているようで、誠実な態度には思えません。

また現状についても、コロナ渦における行動制限・イベント制限の中でコミケも赤ブーもそれ以外のイベントも苦境に立たされましたが、それぞれの特徴や強みを保ちつつ全体では回復期に入っている、というのが筆者の感想です。

こういった話はコミックマーケットが蓄積しているレポートが常に参照できることに加えて、今回赤ブーが詳細なデータを発信したからこそ述べることができました。願わくば、赤ブーブー通信社においても、開催記録やレポートを普段から公開してくれていたら、今回のような言説にも多くの人が反証できただろうなと思った一件です。　
　
　

2024年はどんなジャンルにサークルが集まったか

最後に今年の記録の一環として、「2024年はどんなジャンルにサークルが集まったかtop100」を発表します。

現在の赤ブーイベントの参加サークル動員とは、複雑な影響力を持つオンリーイベントの存在を抜きには語れません。そのため単純なサークル数の比較では、ジャンル人気が素直に反映されているとは言いづらいと考えています。できれば、本文に記載した内容も込みで今年の振り返りとして眺めてもらえれば幸いです。

※単位をそろえるために、JUNE BRIDE FES 2024・DOZEN ROSE FES 2024のサークル数は作品単位に再集計しています。

※ランキングデータの本サイト外への転載・コピー行為を禁じます。

終わりに

今年最初にあのアレどこを更新したのは、1月3日の「COMIC CITY 大阪 125 サークル集計」でした。この2日前の1月1日、私は令和6年能登半島地震を富山で被災していました。

直接的な被害こそ軽微だったものの、富山と石川を繋ぐ道路や電車などは軒並み止まり、普段の豪雪ならびくともしない北陸新幹線も立ち往生していました。富山でも氷見市（能登半島の南東部にある富山県の市）を中心にひどい被害が報道されている最中でした。

石川を生活拠点としている自分は、「こんな状況で石川に戻って、普段通り活動できるだろうか？」と不安だったことを覚えています。

結果的には、1月3日午後には県境の主要道路や鉄道が徐々に復帰しはじめ、どうにか石川に戻れました。あらかじめ準備していたデータをアップロードして更新できましたし、生活に困るような大きな被害も、運よくありませんでした。

しかし、通ってきた道路のあちこちは崩れて立ち入り禁止になっており、年末には帰省客でごった返していた金沢駅は閑散としてあちこち漏水や故障の看板が立ち、お店に入れば壁がはがれていたりガラスが割れている一角があったり、観光客で賑やかだった市街地にもまばらな人しかいない光景がショックだったのを覚えています。

約1年経った今、金沢駅やその周辺はすっかり修理されてて観光客でごった返しています。しかし、ふとした時に能登での被災経験やいまある苦境が、地元民との世間話にのぼります。我が家からほんの数キロ離れた地域ではいまも災害の爪痕も生々しく残っています。

先日、直接参加した東京の同人誌即売会で、震源地となった珠洲市にある同人誌印刷所のスズトウシャドウさんにご挨拶できる機会がありました。石川から来たことを告げると「いまここにいられることが奇跡だと思います」とお話しいただいたことが印象的でした。

スズです。

2024.12.30
冬コミ搬入チームが無事に帰社しました。
これをもちまして2024年の営業を終了いたします。
元旦の能登半島地震被災による休業、4月からの営業再開、本格的な復旧作業が始まった矢先の奥能登豪雨、
いろいろな事がありすぎて未だ夢の中にいるような気持ちになる事があります。

— スズトウシャドウ印刷 (@suzutow) December 30, 2024

皆様へのお願いです。

能登を含めた北陸は豪雪地帯です。これからの季節、日本海側は数か月にわたって曇天に覆われ、冷たい雨雪の季節に再び入ります。被災から二回目の冬を乗り切るためにも、どうか継続的なご支援をお願いいたします。

• 令和６年能登半島地震災害義援金（石川県、富山県、新潟県、福井県）日本赤十字社
• 石川県義援金窓口（2025年12月26日まで）
• 富山県義援金窓口（2025年3月31日まで）

皆様もよいお年をお迎えください。