AliceDISPLAY(アリス棚)を実際に同人誌即売会で使ってみた

2015年夏にアリスブックスさんが公表した「同人誌即売会卓上組み立て式販売台 AliceDISPLAY」を、だいぶ早い段階で購入しまして、現在までに実際に3回ほどサークル参加時に使用しました。

その感想と、あと個人的にひじょーに困った組み立て方についての解説記事です。購入前の参考や、買ってはみたけどつまづいているという人は参考にどうぞ。

(なおタイトルにある「アリス棚」は筆者が勝手に言い始めた非公式通称です。記事内やSNSなどでは「AliceDISPLAY」をだいたい「アリス棚」と称しています)

アリス棚ってなに?

同人誌委託でもおなじみの書店「アリスブックス」が製造・販売をしている、同人誌即売会用展示棚です。

同種の展示棚との違いは、ポスターなどが張り込めるボードや値札の設置場所などが最初から用意されており、単に同人誌を展示する以外にもスペースでのアピール方法などにも気を配った構造をしています。

また幅45cm×3段という比較的大きめの什器で、A5本なら最大9種まで置けるという大容量ぶりです。

2015年8月に販売開始し、現在も主にウェブ通販や大規模即売会のアリスブックスブースで販売しています。

最初につまづいた「組み立て方がわからん!」

alice_manual(販売ページより)

現物を箱からだすと販売ページにも掲載されている上記説明書(実物はモノクロ印刷)が同封されていまして、これを参考に組み立てていたところ、真っ先につまづいたのが「棚部分α(青パーツ)」と「棚部分β(赤パーツ)」の組み立て方でした。なんというか、実物が完成図になるまでの中間が想像できない。

ツイッター検索してみても同じところでつまづいてる人をみかけたので、この項では公式マニュアルよりもう少し詳しく組み立てについて解説します。

棚部分α

alice_01(クリックすると大きくなります)

完成後は上段と側面を支える支柱(スペースが足りないので図では支柱部分は省いています)、この製品の特徴でもある「PRボード」になる部分です。

一枚の大きなダンボールが最初から折りたたまれて3パーツに分かれており、一番面積の大きいボード部分の青線を谷降りする(現物には最初から薄っすら折り目があります)と、凸凹のついた黄色パーツが前面に出てきて完了です。

棚部分β

alice_03(クリックすると大きくなります)

完成後は中段と下段になる部分です。

こちらも1枚の大きなダンボールが最初から折りたたまれて、完成後に正面になる側(サークル配置されたときに通路を向く側)と背面になる側(サークルスペースを向く側)の2パーツからなっています。

正面側(画像では緑のパーツ)は、下から約10センチ・20センチ部分に折り目がついており、これを谷折りにします。

背面側(画像では青のパーツ)は、上から約10センチ部分を谷折り、下(凹凸のある方)から約10センチ部分を山折りにします。

αとβを組み合わせた図

alice_04(クリックすると大きくなります)

α棚をサークルスペース側に、β棚を通路側に置き、公式説明書の②部分に進み、土台部分に凹凸部分を差し込んで完成です。

使ってみて良かったところ

目立つ

とにかく目立ちます。A3長辺とほぼ同じ幅×3段もあり、漂白のきいた真っ白な表面のため、これをイベントに置くとだいぶ目立ちます。

以前までは100円ショップで購入した台所用折り畳み棚を使って同人誌を展示していたこともありますが、その頃と比べても高さがあり歩く人の目線に近いためか、明らかに「通りすがりに表紙が目に入って、気になって立ち止まった人」が増えた実感があります。

ポスタースタンドの代わりになる

特徴でもある背面のPR用ボードはA3長辺(42cm)を余裕で配置できる幅があるため、三段目に本を置かなければA3横向きポスターをまるっと貼り付けることができます。

ただしそれでも2段目に本を置くとポスター下部が隠れてしまうため、当サークルでは思い切って標準のPR用ボードに新たな板を増築し、三段目に本を置いても隠れない高さに拡張。現在の当サークルでは机上用ポスタースタンドを兼ねたものになっています。

ポスター見本

背面が通路側から完全に隠れて、さらに物が置ける

棚の奥行きが約30cmあり、45cm奥行きの机のほぼ中央に置くと前後5cmほどのスペースが生まれます。この背面側の幅は正面からは完全に死角になり、また棚の内側(ちょうど上段の真下)に物をおけるスペースもあるため、通路からは腕を伸ばしてもまず手が届きません。

このことから貴重品やおつりを、周囲からは目に付きにくい場所におけるようになります。

背面

使ってみてデメリットに感じたところと、その対策

組み立て方がわかりづらい。

前項でも触れましたが、とにかく最初はここでつまづきました。というのも、現物そのものに薄っすらと最初から折り目でガイドはついているものの、その折り目をどの方向に折ればいいのか、という情報が本体上には何もないからです。

また現物の写真を見てわかるとおり、表面は真っ白なダンボールなので、やろうと思えばどこでも折り目をつけることができます。このため「この折り目は本当にガイド用の折り目なのか? もしかして取り出したときについた無関係な折り目なのでは?」と、かなり迷いながら折り目をつけていました。ここで間違えた折り目をつければその後の強度に不安が出るため、最初に組み立てたときはかなり恐々していました。

これから購入する人へのアドバイスとしては、買ってすぐにイベントに持ち込んでそこで始めて組み立てるのではなく、特に立体物の組み立てに自信がないと開場前の準備時間を相当取られてしまう可能性あるため、イベント前に試しに一度組んでみることをオススメします。

紙なのでもろい(特に土台との接合部分)

これは購入前から覚悟していた頃ですが、やはり全ての素材がダンボールで出来ているため、耐水性の低さはもちろんですが、うっかり力を入れるとかなり簡単に破れます。

特に土台部分に差し込む凹凸部分はどうしてもこすれてしまい、筆者はまだ慣れない頃に無理な方向に力を入れて、端が折れたり凹部分に不要な切れ込みが入りました。

筆者のアリス棚は現在、ダンボールの側面(板の中の波型がみえるところ)に白いビニールテープを張り込んでなるだけ補強しています。

たたむと分厚い

解体後の折りたたんだ状態にすると、高さ約12~3センチほどありなかなかの厚みがあります。搬出用ダンボールやカートなどに入れようとすると、かなりかさ張るサイズです。

付属のトートバッグは不織布製で口が閉じない造りのため、搬入出で本体を痛める可能性があるなと感じて、筆者の現在は100円ショップで購入したファスナー付きナイロンバッグ(45cm×40cm×マチつきのもの)に入れ替えて持ち運びしています。

またPRボードが不要なら持っていかないようにすると、畳んで重ねたときの厚みが2~3cmほど圧縮できます。

売り子が隠れる

45cm×90cmの一般的なサークルスペースに置いたときの写真はこちら。

机幅比較

見てのとおり片方に寄せて置いても机の半分以上が隠れます。またRPボードを置いた状態でスペースの椅子に人がすわると、正面からはほぼ顔は見えないくらいの高さです(なおこの写真ではPRボートからはみ出す位置にポスターを置いているので、素の状態より更に高さが出てます)

こちらは対策が難しく、最初から「そういうものだ」と思って使用し、売り子二人体制が必要な場合は避けたほうが無難です(そんなサークルさんは元から棚は使わないかも)

B5サイズの同人誌をおくと中途半端に横が余る

アリス棚の横幅は約45cmあり、これはA5縦置き(横幅約15cm)だとぴったり3冊置けます(A4縦置きを2冊を置けるサイズともいう)

ですがマンガ同人誌に多いB5縦置き(横幅約18cm)は3冊置くとはみ出し、2冊置くと約9cm余ります。せっかく棚自体がたっぷり横幅を取っているのにこの余り部分はもったいない。

ということで、幅4センチ×高さ25cm(B5長辺と同じくらい)の短冊を厚紙で作り、そこに「新刊」「既刊」という文字を印刷して一緒に立ててみました。「中途半端に余ったデッドスペース」を「本の情報を伝えるスペース」に変えるという試みです。

短冊見本

実際の写真です。この時には「本の影になって短冊が隠れる」という指摘があったため、次回からは立てかけるようにしてなるべく前のほうに張り出すようにしたいと考えています。

また側面を支える斜めの板は設置しなくても自立するとのことなので(ソース)、あえてこの部分はとっぱらい、少しだけ棚からはみ出して置くという方法もありかなと考えています。

その場合は左右のサークルスペースさんに迷惑のないよう細心の注意をはらうことと、本が落ちないように気をつける必要があります。また板を外すと下段前方のかえし(値札を刺せるところ)が自立できないという点にも注意です。

下段が軽いと倒れやすい

そこそこ高さがあるのと本体自体がかなり軽いので、中段と上段に多めにものを置くとサークルスペース側に倒れやすいです。

なるべく下段が一番重くなるように展示物の量や重さを調整しましょう。またよくはける本を下段においておくと時間経過で軽くなっていくのも注意です。

表紙が結構隠れる

下段はかえし部分(値札を刺せるところ)が、中段と上段は前に置いた本の影になって割りと表紙が隠れます。また中段と上段にも手前にかえしがあるので、前方に何も置かなくても結構隠れます。

かえし部分は高さ約8cmあり、B5縦置きでは下から約4分の1、A5縦置きでは約3分の1くらいに相当します。表紙下部にロゴを配置していたり、帯を巻いている同人誌だと、正面からはほぼほぼ隠れて見えなくなる高さです。

隠れることを前提に展示を調整するか、もしくは上げ底を置いて隠れる部分をなるべく減らすようにするといいかと思います。

目立ちすぎる

これは長所でもあり短所でもあり……。

冬コミ(C89)3日目にも持っていきましたが、少なくとも配置された館では自サークル以外で使用しているのを見ておらず、大きさと真っ白な表面ともあいまって周囲からも相当浮きます。最近は比較的よくみかけるようになった「シロイタナ」と比べると、幅も高さも一回り以上大きいです。

「それがいいんだ!」と思うサークル主もいますが(自分とか)、「棚は導入したいが目立ちすぎるのも困る」と思うサークル主はもっと小さい棚の導入をオススメします。

(アリス棚以外にもさまざまなサイズの棚を紹介している「同人誌即売会・創作イベント用の「棚」を集めてみた」も参考にどうぞ)

終わりに

以上がイベントで3回ほど使ってみた感想です。

一ユーザーとして総合的にはたいへん満足していますが、かといって改善すべき点がないものとも思っていません。製造元でもあるアリスブックさんや、同種の什器を製作しているメーカーさん、またはこれから制作しようと考えいるメーカーさんにおきましては、可能であれば今後もブラッシュアップをしていただきたいなと思います。

これから購入を考えている同人者においては、良し悪しのある製品だということを前提に、ではそれを前提に活用すればよいか/どう対策し、なんなら拡張できるだろうかと考えるのもまた楽しい製品である、と伝わるといいなと思います。

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